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リハビリ病棟の面談で、相談員にこう聞かれた。「退院は来月の予定です。ご自宅に戻られますか。それとも施設をお考えですか」。
転んで足の付け根を骨折した母は、歩行器でなんとか歩けるようになった。けれど、夜中にひとりでトイレに立てるかは分からない。家に帰すか、施設を探すか。決めるための時間は、思っていたより短いものです。
このページでは、国の資料をもとに、家か施設かの分かれ目と、退院までにやっておくことをまとめました。
- 家に帰せるかどうかの分かれ目は、夜のトイレと認知症の症状に、誰が付き添えるかです
- リハビリ病棟の入院には、国が決めた日数の上限があります。足の付け根などの骨折なら90日です。退院の日は、そこから逆算します
- 特養は、原則として要介護3以上でないと入れません。申し込んでも、すぐに入れるとは限りません
- 迷うなら「いったん老健」という道があります。老健は、家に帰るための施設です
- 家に帰すなら、退院の前に家を見に来てもらえるかを病院に聞いてください
- リハビリ病棟
- 正式には「回復期リハビリテーション病棟」。急な治療が終わったあと、家に帰るためのリハビリを集中して行う病棟です。
- 老健
- 介護老人保健施設のこと。看護や介護を受けながらリハビリを続け、家に帰る準備をする施設です。
- 特養
- 特別養護老人ホームのこと。介護を受けながら暮らす施設です。
家に帰せるかは、夜のトイレと認知症の症状で分かれます
家か施設か。家族はつい、親の歩く力や、家の段差から考えます。けれど、家で介護を続けている家族が「もう無理かもしれない」と感じるのは、もっと具体的な場面です。
各地の市区町村が、同じ質問票で行っている調査があります(在宅介護実態調査)。国の補助事業として、97の自治体の回答をまとめた2026年8月の報告書は、要介護3以上の人の家族について、こう書いています。
要介護3以上では、主な介護者が「在宅生活の継続が困難」と判断する特に重要なポイントとして、「認知症」と「(夜間の)排泄」の2点が挙げられると考えられます。 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果〔概要版〕」(令和8年度 老人保健健康増進等事業・令和8年8月)
家で介護を続けられるかは、夜中のトイレと、認知症の症状に付き添えるかで分かれやすい、という結果です。
だから、退院の前に家族で考えたいのは、「家か施設か」という大きな問いではありません。「夜中に親がトイレに起きたとき、誰が付き添うか」です。次の4つを、家族で書き出してみてください。
- 夜中にトイレに起きたとき、付き添える人はいるか。毎晩か、週に何日か
- 物忘れや、夜に落ち着かなくなる様子が、入院中に出ていないか(病棟の看護師に聞けます)
- 日中、親がひとりになる時間はどのくらいあるか
- 食事と薬を、誰が用意して、飲んだかを確かめるか
同じ報告書には、もう1つ大事な結果があります。要介護3以上の人で、訪問のサービスを回数多く使っている家庭ほど、夜のトイレや認知症についての家族の不安が軽く、施設を考える割合も低い傾向がありました。家族だけで抱えず、人に来てもらう回数を増やせるか。そこも、家に帰せるかの分かれ目の1つです。
介護保険にも、夜中に来てもらえるサービスがあります。決まった時間の見回りと、呼んだときの訪問を組み合わせるもの(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)や、夜間だけのもの(夜間対応型訪問介護)です。どちらも要介護1以上の人が対象です。報告書も、訪問の回数を増やす手段として、この見回りのサービスを挙げています。近くに事業所があるかは、ケアマネジャーか地域包括支援センターに聞いてください。
保険の外で、夜に人を頼むこともできます。ただ、金額は小さくありません。ある自費ヘルパーの会社では、夜中の7時間で26,400円(税込)です。
毎晩頼めば、30日で79万円を超えます。夜を保険の外だけで埋めるのは、毎晩続ける前提には向きません。退院した直後の数週間や、家族が休みたい夜に絞って使うものです。夜のトイレが毎晩の心配になるなら、介護保険の夜の訪問を組み合わせるか、施設を考える時期です。
退院の直後や、家族が休みたい夜だけ頼む
体を支える介助や、夜の見守りまで頼める保険外のヘルパーです。介護保険の認定がなくても使えます。対応する地域は会社ごとに違います。
金額は、2026年9月26日に公式ページで確かめた一例です。交通費は別にかかります。イチロウの愛知県の対応地域は、名古屋市16区と、尾張を中心とした23市町です。岡崎市・豊橋市・豊田市などは、どちらの会社も対象外です。その場合は、お住まいの地域包括支援センターに、保険の外で頼める事業者を尋ねてください。料金と対応地域は家事代行と保険外サービスの料金比較にまとめています。
退院の日は、リハビリ病棟の日数から逆算します
骨折や脳の病気で入院した人は、治療が落ち着くと、リハビリ病棟に移ることがあります。この病棟が何のためにあるかは、国の通知に書かれています。食事やトイレなど、身の回りのことをできるようにして、家に帰ることが目的です。
脳血管疾患又は大腿骨頸部骨折等の患者に対して、ADLの向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための病棟及び病室 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添1「A308 回復期リハビリテーション病棟入院料」(1)
リハビリ病棟は、家に帰るための病棟です。ずっと入院していられる場所ではありません。
そのため、この病棟の入院料が認められる日数には、国が決めた上限があります。上限は、入院のきっかけになった病気やけがで決まります。2026年6月からの国の基準では、日数はこう決まっています。
| 入院のきっかけ | 上限の日数 |
|---|---|
| 脳梗塞・脳出血などの脳の病気、脊髄のけが | 150日(高次脳機能障害を伴う重い脳卒中などは180日) |
| 大腿骨・骨盤・背骨・股関節・膝の骨折、手足の2本以上にわたる骨折/股関節や膝の人工関節の手術/心筋梗塞など急に起きた心臓の病気や、その手術/手術や肺炎で安静にしていて体が弱った | 90日 |
| 大腿骨・骨盤・背骨・股関節・膝の、神経・筋肉・靱帯のけが | 60日 |
骨折でリハビリ病棟に移ったなら、区切りは約3か月です。退院の日は、そこから逆算します。
日数は、リハビリ病棟に入った日から数えます。上限の日まで必ず入院できる、という意味ではありません。回復の様子によっては、もっと早く退院の話が出ます。
病棟に移ったら、なるべく早く「退院の見込みはいつごろですか」と、主治医か相談員に聞いてください。家か施設かを決められる時間は、その日から退院までの残りの日数です。
この日数は、回復期リハビリテーション病棟の決まりです。急な治療のための病棟からそのまま退院する場合や、ほかの種類の病棟では、日数の決まり方が違います。
特養や老健に入るにも、家で介護保険のサービスを使うにも、介護保険の認定(要介護認定)が要ります。結果が退院に間に合わないこともあるので、まだなら早めに相談してください。申請の時期と、結果を待つ間の埋め方は、退院後、介護認定を待つ間にできることにまとめています。
施設は、申し込んでもすぐに入れるとは限りません
介護保険で入る施設の1つが、特養です。ただし、入れる人に条件があります。
特養は、原則として要介護3以上でないと入れません。要介護1・2の人は、家で暮らすのが難しいやむを得ない事情があると認められた場合に限られます(特例入所)。要支援の人は入れません。
そのうえ、申し込んでも、空きが出るまで待つことがあります。厚生労働省の調査で、いちばん新しいのは2025年4月1日時点のものです。
このとき、要介護3以上で特養に申し込み、まだ入れていない人は、全国で20.6万人でした。そのうち8.6万人は、家で待っている人です。
ただ、国はこの数字について、長いあいだ名簿に載ったままの人も含まれていて、全員がいますぐ入所を必要としているわけではない、と注意しています。前回の調査からは、2割近く減ってもいます。「何年も待つ」と決めつけず、希望する施設に、空きの見込みを直接聞くのが確実です。
特養は、条件に合っていても、申し込んだその月に入れるとは限りません。
愛知県は、要介護3以上の認定を受けた人のうち、特養に申し込んで待っている人の割合が4.4%で、全国(8.6%)の約半分です。それでも、空きの状況は施設ごとに違います。
特養のほかに、民間の有料老人ホームなどもあります。入れる条件や費用は、施設ごとに違います。どちらを探すにしても、まず病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)に、退院後の行き先を相談したいと伝えてください。家の近くの施設は、国の「介護サービス情報公表システム」で、種類ごとに探せます。
迷うなら、「いったん老健」という道があります
家に帰すには不安が残る。けれど、施設でずっと暮らすと決めるのも早い。そんなときに考えたいのが老健です。老健がどんな人のための施設かは、介護保険法に書かれています。
要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者 介護保険法 第8条第28項(介護老人保健施設の定義)
老健は、体の力を取り戻して、家での暮らしに戻るための施設です。
老健では、看護や介護を受けながら、リハビリを続けられます。リハビリ病棟の日数が来ても、すぐに家へ戻らず、あいだに一段階をはさめます。そのあいだに、家の手すりやベッドを整える時間もとれます。
ただし、老健に入れるのは要介護1以上の人です。空きや、受け入れられる医療の手当ては、施設ごとに違います。老健を考えていることは、病院の相談員に早めに伝えてください。
家に帰すなら、退院の前にやっておくこと
家に帰すと決めたら、病院にお願いできることがあります。「退院の前に、家を見に来てもらえますか」と聞いてみてください。
1か月を超えて入院しそうな人について、病院の看護師やリハビリの担当者が、退院の前に家を訪ねる仕組みが、国の医療保険の決まりにあります。家の造りや、介護する人の状況を見て、退院後の暮らしを助言するものです。実施するかは病院しだいで、訪問の交通費は家族の負担です。
あわせて、次のことも退院までに決めておきます。
- ベッドや手すり:介護保険で借りられる物と、要介護度によっては借りられない物があります。申請中の扱いも含めて介護認定を待つ間にできることにまとめています
- ベッドを置く場所づくり:家具の移動や大掃除は、介護保険のヘルパーには一般に頼めません。実家の片付け、ヘルパーに頼めるのはどこまでにまとめています
- 毎日の食事:かむ力が落ちていたら、やわらかさの段階で選べる宅配食があります。介護食の宅配の選び方をご覧ください
- 家族が休む日:数日だけ施設に泊まれるショートステイがあります。ケアマネジャーに相談します
介護保険のヘルパーに頼めない家事や、保険で足りない分は、保険の外のサービスで埋めます。ヘルパーに頼めること・頼めないことの全体は、訪問介護でできないこと一覧にまとめました。
よくある質問
- 要支援と言われています。老健や特養には入れますか
- どちらも入れません。老健は要介護1以上、特養は原則として要介護3以上の人の施設です。民間の有料老人ホームなどは、施設ごとに条件が違います。まず、お住まいの地域包括支援センターに相談してください。
- 施設の費用は、どのくらいかかりますか
- 特養や老健では、介護サービスの自己負担に、食費と部屋代が加わります。国が基準にしている食費の額は、2026年8月から1日1,545円に上がりました。実際の額は施設ごとに違います。所得が低い人は、申請すると食費と部屋代が軽くなる制度があります。市区町村の介護保険の窓口に聞いてください。
- 退院までに、介護保険の結果が間に合いません
- 申請した日にさかのぼって使える仕組みと、その注意点を退院後、介護認定を待つ間にできることにまとめています。結果を待つ間に使える保険外のサービスも、そちらで紹介しています。
- 家に帰したあと、やはり難しいと感じたら
- ケアマネジャーに相談してください。訪問の回数を増やす、ショートステイで家族が休む日をつくる、といった組み直しができます。そのあいだに施設を探すこともできます。
- 実家が遠く、退院の話し合いに通えません
- まず病院の相談員に、遠くに住んでいることと、連絡の取りやすい時間を伝えてください。離れて暮らす親の手配の全体は、遠方の親に家事代行を頼む方法にまとめています。
さいごに
「家か施設か」を、退院の日に一度で決めきる必要はありません。家に帰す、いったん老健に移る、施設を探す。状況が変われば、あとから組み直すこともできます。
決める材料は、夜のトイレと認知症の症状に、誰がどれだけ付き添えるかです。家族で書き出したら、それを持って、相談員やケアマネジャーと話してください。
出典
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果〔概要版〕」(令和8年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業分・令和8年8月)。PDFの14枚目「集計結果の傾向③」、15枚目「傾向④」、16枚目「傾向⑤」、18枚目「考察の一例」。97自治体・49,116件の集計。厚生労働省「在宅介護実態調査の活用について」(令和7年8月8日更新)から、この集計へのリンクが張られています
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2026/08/houkatsu-2608_01.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000154928.html
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第70号・令和8年3月5日。令和8年6月1日から適用)。別表第九「回復期リハビリテーションを要する状態及び算定上限日数」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675854.pdf
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号・令和8年3月5日)の医科点数表。「A308 回復期リハビリテーション病棟入院料」注1(病棟に入院した日から起算)、「B007 退院前訪問指導料」注1・注2
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添1 医科点数表(令和8年7月30日訂正後の版)。「A308」(1)、「B007」(1)(4)。改定の資料一覧は「令和8年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省 老健局高齢者支援課「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)に関する調査結果を公表します」(令和7年12月25日公表・2025年4月1日時点)。表1、表2、参考3(都道府県別の割合)
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001620895.pdf
確認日:2026年9月26日 - 介護保険法(平成9年12月17日 法律第123号)第8条第9項・第15項・第16項・第22項・第27項・第28項。e-Govの現行条文
https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
確認日:2026年9月26日 - 介護保険法施行規則(平成11年3月31日 厚生省令第36号)第17条の9・第17条の10(特養に入れる要介護状態の区分と、要介護1・2の特例)。e-Govの現行条文
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省 老健局介護保険計画課・老人保健課「介護保険最新情報 Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(令和8年5月29日)。参考資料の食費の基準費用額
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf
確認日:2026年9月26日 - 厚生省老人保健福祉局振興課長「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(老振第76号・平成12年11月16日発出)別紙「一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例」2(2)。国立社会保障・人口問題研究所が公開している写しで確認
https://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/syakaifukushi/824.pdf
確認日:2026年9月26日 - 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
確認日:2026年9月26日 - イチロウ「料金について」(夜間料金・深夜パック・交通費)、同「提供エリア 愛知県」。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://ichirou.co.jp/price
https://ichirou.co.jp/area/aichi
確認日:2026年9月26日 - クラウドケア「サービス提供地域」(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・京都府・兵庫県。離島を除く)。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.crowdcare.jp/area/
確認日:2026年9月26日
本ページは公的機関と各社が公表している資料をもとに作成していますが、専門家の監修は受けていません。医療保険と介護保険の決まりは、年度によって変わることがあります。入院や入所の判断は、主治医と病院の相談員に、介護保険の申請や手続きはお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。


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