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久しぶりに実家へ帰ったら、玄関から物が積み上がっていた。廊下にも台所にも段ボールが並んでいる。ヘルパーさんは週に2回来ているはずなのに、なぜ片付いていないのか。
手を抜いているわけではありません。ヘルパーが片付けられる範囲は、国の通知で線が引かれています。その線は「家をきれいにする」ではなく、「本人が今日を過ごせるようにする」ところに引かれています。
このページでは、通知の原文をもとに、保険で頼める片付けと頼めない片付けを分けました。そのうえで、頼めないほうを誰に頼むかまで書いています。
- ヘルパーが片付けられるのは、本人がいま使っている場所までです。使っていない部屋や物置は入りません
- 大掃除・窓のガラス磨き・家具の移動は、国の通知が名前を挙げて対象から外しています
- 草むしりやペットの世話も対象外です。ただし外れる理由が、大掃除とは違います
- 積み上がった物の片付けは、家事代行・社会福祉協議会・回収業者のどれかに、保険の外で頼むことになります
- 回収を頼むときは、市区町村の許可を受けた業者かどうかを先に確かめてください
- 生活援助
- 掃除・洗濯・調理といった家事のお手伝いのことです。介護保険のヘルパーが行います。
- 保険外サービス
- 介護保険を使わず、料金を全額自分で払って頼む家事や片付けのことです。自費とも呼びます。
- 一般廃棄物処理業の許可
- 家庭から出た不用品を集めて運ぶために、市区町村から受ける許可のことです。
ヘルパーが片付けられるのは、今日使う場所までです
生活援助には、掃除が入っています。国の通知は、その中身をこう書いています。
○居室内やトイレ、卓上等の清掃
○ゴミ出し
○準備・後片づけ 厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号。平成30年3月30日改正・老振発0330第2号)
対象は、本人が寝起きして、食べて、通る場所です。家全体ではありません。
本人の部屋、台所、トイレ、風呂、そこまでの通り道。ここが掃除の相手です。使っていない部屋、物置、庭、車庫は外れます。次に出てくる老振第76号も、別紙の1で「主として利用者が使用する居室等以外の掃除」を対象外に挙げています。親が寝ている部屋のとなりに段ボールが積んであっても、ヘルパーはそこに手を出せません。
ただし、家族と一緒に使う場所が絶対に対象外というわけではありません。本人の安全にかかわる事情があるときの扱いは、訪問介護で頼めること・頼めないことに書きました。あきらめる前に、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
積み上がった物を運び出して、家を元の状態に戻す。これは掃除の範囲を出て、片付けの作業になります。介護保険の掃除は、本人がその日を過ごすためのものなので、ここには届きません。
「頼めない」には、理由が2つあります
保険で頼めない家事は、平成12年11月16日に出た老振第76号という通知の別紙に並んでいます。別紙は、家族の都合のための家事(1)と、日常生活の援助に当たらない家事(2)に分かれていて、その2が、さらに2つの項目に分かれています。項目が違うと、断られる理由も違います。
1つ目は、別紙の2⑵です。こう書かれています。
日常的に行われる家事の範囲を超える行為 厚生省老人保健福祉局振興課長「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(老振第76号・平成12年11月16日)別紙
大掃除や窓のガラス磨きは、この項目に入ります。家事ではあっても、毎日の範囲を超えています。
この項目には、家具や電気器具の移動、修繕、模様替え、大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ、室内外の家屋の修理、ペンキ塗り、植木の剪定などの園芸、正月や節句のために特別な手間をかけて行う調理が並びます。年末に家じゅうを片付ける、棚を動かして裏のほこりを取る、窓を磨く。どれもこの項目に入ります。
2つ目は、別紙の2⑴です。こう書かれています。
訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為 同上
草むしりやペットの世話は、この項目に入ります。やらなくても暮らしは回る、という理由です。
こちらに並ぶのは、草むしり、花木の水やり、犬の散歩などペットの世話です。
この2つの項目は、断られる理由が違います。同じ「頼めません」でも、次に打つ手が変わってきます。
この違いは、頼み方を変えるときに効いてきます。日常の範囲を超えているほうは、範囲と回数を区切ると通ることがあります。換気扇の油汚れを一度に全部落とすのではなく、毎週少しずつ拭く。この形なら、ふだんの掃除として計画に入る場合があります。担当のケアマネジャーに相談してみる価値はあります。
ケアマネジャーに伝えるときは、作業の名前ではなく、どこを、どのくらいの頻度で、という形で伝えてみてください。「大掃除をお願いしたい」だと断られる話が、「台所の床を毎週拭いてほしい」だと計画に入ることがあります。
いっぽう、草むしりやペットの世話は、区切っても保険には戻りません。最初から保険の外で考えたほうが早く進みます。
掃除のほかに何が頼めて何が頼めないかは、訪問介護で頼めること・頼めないことに一覧でまとめてあります。同居している家族がいる場合の扱いも、そちらに書きました。
積み上がった物は、誰が片付けるのか
保険の外に出ると、頼み先は大きく3つに分かれます。1時間あたりの目安を5つの頼み先で並べた表は訪問介護で頼めること・頼めないことにあるので、ここでは片付けに向く3つを取り上げます。
1つ目は家事代行です。片付けや整理を、本人や家族といっしょに進める形が多く、捨てるかどうかの判断は本人に残ります。料金は時間で決まるので、どこから手をつけるかを決めてから呼ぶと、時間が無駄になりません。
保険で頼めない片付けを、誰に頼むか
いっしょに整理しながら進めてもらうなら、家事代行が入口になります。高齢者向けの家事代行は、住んでいる市によって頼める会社が変わります。
2つ目は、社会福祉協議会やシルバー人材センターです。名古屋市社会福祉協議会の在宅福祉部は、訪問介護の事業所で「生活応援サービス」という保険外のメニューを用意していて、その説明に大掃除の手伝いが挙がっています。
この生活応援サービスは、料金と、どの区で頼めるかが公表されていません。使えるかどうかは、お住まいの区の事業所に問い合わせて確かめてください。愛知以外の方は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会に同じメニューがあるか聞いてみてください。聞くときは、料金・頼める地域・介護保険の利用者に限られるか・大掃除や片付けが入るか。この4つをたずねると、その場で使えるかどうかが分かります。
シルバー人材センターも同じ2つ目の枠です。草むしりや庭木の手入れ、簡単な片付けを受けているところがあります。受けられる作業と料金は地域ごとに決まっているので、お住まいの市区町村のセンターに直接たずねてください。ただしその場で指示を出しながら進める形の作業は受けていません。「これは残して、次はあっち」と伝えながら片付ける進め方には向きません。人を指名することもできません。
3つ目は、不用品の回収業者です。運び出して処分するところまで頼めます。片付けの終わりが早いのはここですが、頼む前に確かめることがあります。次にまとめました。
実家の片付けは、どこから手をつけるか
親の家の片付けは、きれいにすることが目的ではありません。転ばないこと、火を安全に使えること、救急車の隊員が入れること。ここが先に来ます。この順番で進めると、量に圧倒されずにすみます。
通り道だけを空ける
玄関から寝室、寝室からトイレ、台所への通り道。この3本の幅を確保します。床に置いてある物を、いったん使っていない部屋へ寄せるだけでかまいません。
夜中にトイレへ立つときにつまずく物がなくなれば、それで初日は十分です。
火と水のまわりを片付ける
コンロの周り、換気扇、冷蔵庫の中、風呂場。ここは放っておくと危険と不衛生に直結します。
冷蔵庫は、期限の切れた物を出すだけでも変わります。親の目の前で捨てずに、袋にまとめて持ち帰る形にすると、もめにくくなります。
まとめて出す日を、先に決める
寄せておいた物を出す日を決めて、その日から逆算します。市区町村の粗大ごみは、申し込みから回収まで日数がかかる地域があります。
自分で処理施設へ運べる市区町村もあります。名古屋市は、引越しや片付けで一度に大量に出るごみを自分で持ち込む方法を案内していて、料金は重さで決まります。運べる車と人手があるなら、ここがいちばん安く済みます。
量が多くて自分では運べないときに、はじめて業者を呼ぶ判断になります。
もう1つ、先に決めておくとよいのが、誰が立ち会うかです。きょうだいがいる場合、費用を出す人と、当日に家にいる人を分けておくと動きやすくなります。あとから「勝手に捨てた」ともめる原因は、たいてい立ち会いの不在です。
この3段階は、1回の帰省で全部やるものではありません。1日で終わらせようとすると、親と衝突して次から家に入れてもらえなくなります。通り道だけ空けて帰る回があっても、それで進んでいます。
回収を頼むときに、いちばん多いトラブル
家庭から出た不用品を集めて運ぶには、市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けているか、市区町村から委託されていることが必要です。国民生活センターは、この許可のない業者とのトラブルが目立つとして注意を呼びかけています。
「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」は、家庭の不用品を回収する資格にはなりません。この2つを掲げた業者に頼んでよいか、という問いに、環境省は「ご家庭の廃棄物を回収できるのは、『一般廃棄物処理業の許可』を持つ業者です」と答えています。番号が並んでいるから安心、とはなりません。
大音量で町中を回る車、空き地での回収、ポストに入るチラシ。環境省は、これらを無許可の業者の宣伝のしかたとして挙げています。「無料で引き取ります」と言われても、その場で渡さないでください。
広告を大きく出している業者が、許可を持っているとは限りません。同センターが2022年11月に公表した資料では、不用品回収サービスに関する相談は2021年度に2,231件まで増えています。
遺品整理でも同じことが起きています。同センターが2025年10月に出した注意喚起には、見積りより高い金額を作業後に言われた例と、残しておく約束だったアルバムまで処分された例が載っています。
先に決めておくと、ほぼ防げます。
- 市区町村のホームページか窓口で、許可を受けた業者を探す
- 複数の業者から見積りを取り、追加料金が出ないことを確かめる
- 作業の中身と料金、キャンセル料を、書いたもので受け取る
- 買い取りもいっしょに頼むなら、古物商の許可を確かめる
- 残す物と処分する物を分けておき、作業の日はできるだけ立ち会う
エアコン、テレビ(ブラウン管でも薄型でも対象です)、冷蔵庫と冷凍庫、洗濯機と衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象です。買い替えなら新しい製品を買う店に、処分だけなら買った店に引き取りを頼む形になります。買った店が分からないときは、お住まいの市区町村が案内する方法で処分します。郵便局で料金を払い、指定引取場所へ自分で持ち込む方法もあります。どの方法でも、リサイクル料金と収集運搬料金がかかります。「無料で引き取ります」という業者にまとめて渡す前に、この4種類だけは分けてください。
親が「まだ使う」と言うとき
片付けが止まる理由は、たいてい量ではなく、親の抵抗のほうです。持ち主の同意がないまま進めると、物より先に関係が壊れます。物を減らす話ではなく、転ばないようにする話として持ち出すと、通りやすくなります。伝え方は親が家事代行を嫌がるときの伝え方にまとめました。
実家が遠くて何度も通えない場合は、手配の順番そのものが変わります。遠方の親に家事代行を手配するに、離れた場所から頼むときの注意を書いています。
よくある質問
- ヘルパーに実家の片付けを頼めますか
- 本人がいま使っている場所の掃除とゴミ出しなら頼めます。使っていない部屋に積み上がった物を運び出す作業は、介護保険の対象外です。保険外のサービスとして、別に頼むことになります。
- 大掃除だけを自費で頼むことはできますか
- できます。介護保険の事業所が、保険外のメニューを別に持っていることがあります。名古屋市社会福祉協議会の在宅福祉部は、原則として介護保険とは別の日にこのサービスを提供する、としています。料金は事業所ごとに違うので、担当のケアマネジャーか事業所に確認してください。
- 草むしりや庭の手入れは頼めますか
- 介護保険では頼めません。通知が、訪問介護員が行わなくても日常生活に支障が生じない行為として、草むしりやペットの世話を挙げています。範囲を区切っても保険の対象には戻らないため、保険外のサービスかシルバー人材センターに頼む形になります。頼み先ごとの費用の目安は訪問介護で頼めること・頼めないことにあります。
- 物が多すぎて、どこから頼めばいいか分かりません
- 先に通り道と、火と水のまわりを空けてください。そのうえで自分で運べない量が残ったら、許可を受けた回収業者に見積りを頼みます。判断に迷うときは、地域包括支援センターに相談すると、その地域で使える窓口を教えてもらえます。
- ヘルパーが来ているのに家が散らかっているのは、事業所に言うべきですか
- 苦情として伝える前に、計画の中身を確かめてください。断られているのではなく、そもそも計画に入っていないことがあります。ケアマネジャーに「この場所を入れられますか」と聞くのが先になります。
さいごに
親の家が片付かない理由は、ヘルパーの働きぶりではなく、介護保険がどこまでを引き受ける制度かという線引きにあります。線の外側は、家事代行、社会福祉協議会、回収業者に分かれています。どれを選ぶかは、残っている量と、親が誰なら家に入れるかで決まります。
まずは通り道を空けるところからで十分です。そのうえで手が足りないと分かった時点で、外に頼む相談を始めてください。
出典
- 厚生省老人保健福祉局振興課長「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(老振第76号・平成12年11月16日発出。平成15年3月19日一部改正)。別紙「一般的に介護保険の生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例」(発出時の題は「家事援助」)。厚生労働省のサイトでは、平成17年4月12日の全国介護保険担当課長会議資料の72ページに、一部改正後の全文が載っています(画像のPDF)。発出時の文言は、国立社会保障・人口問題研究所が公開している写しでも確認しました。
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/050412/dl/9-3.pdf
https://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/syakaifukushi/824.pdf
確認日:2026年9月24日 - 厚生労働省「『訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について』の一部改正について」(老振発0330第2号・平成30年3月30日発出)。老計第10号の別紙を収録。生活援助の「2-1 掃除」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000201799.pdf
確認日:2026年9月23日 - 独立行政法人国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」(2022年11月2日公表・2022年11月11日更新)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html
確認日:2026年9月23日 - 独立行政法人国民生活センター「見守り新鮮情報」第525号「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(2025年10月30日公表)
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen525.html
確認日:2026年9月23日 - 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」Q3ほか。産業廃棄物処理業・古物商の許可では家庭の廃棄物を回収できないこと、無許可業者の宣伝のしかた。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html
確認日:2026年9月23日 - 豊田市「違法な『無許可』の不用品回収業者を利用しないでください!」。排出者が罪に問われたり廃棄物撤去費用を請求される場合があること。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
確認日:2026年9月23日 - 環境省「家電リサイクル法の概要」。対象機器の列挙(テレビは液晶式・有機EL式・プラズマ式・ブラウン管式)と、消費者が収集運搬料金とリサイクル料金を支払うこと。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.env.go.jp/recycle/kaden/gaiyo.html
確認日:2026年9月23日 - 経済産業省「家電4品目の『正しい処分』早わかり」。購入した小売店が分からない場合はお住まいの市区町村が案内する方法によること、郵便局振込方式で料金を払い指定引取場所へ持ち込む方法があること。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/fukyu_special/
確認日:2026年9月23日 - 公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会「お仕事の発注にあたって」。特定の会員を指定して仕事を依頼することは原則としてできないこと、発注者の指揮命令の下で就業する仕事は対象外であること。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://zsjc.or.jp/order/order_01.html
確認日:2026年9月23日 - 名古屋市「引越しや片付け、遺品整理などで一度に大量に出るごみ(一時多量ごみ)の処理」。自己搬入の料金は重量に応じて決まること。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/gomi/1012410/1012415.html
確認日:2026年9月23日 - 社会福祉法人名古屋市社会福祉協議会 在宅福祉部「訪問介護(ホームヘルプサービス)」。生活応援サービスの記載。資料そのものに発行年月日の記載はありません
https://zaitaku-nagoyashakyo.com.inc/service/detail/id=622
確認日:2026年9月23日
このページは、上の一次情報をもとに、運営者が調べた範囲でまとめたものです。専門家の監修は受けていません。介護保険の運用は市区町村ごとに異なり、年度で変更される場合があります。料金や対応する地域も、各社の都合で変わります。実際に頼む前に、担当のケアマネジャーと、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。料金と対応する地域は、各社の公式ページでご確認ください。


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